cipolinaの甘い生活

お菓子ときどき旅

LADUREE SAINT HONORE FRAMBOISE


 怒涛のスタージュ一週間。フランス語は話せなくても英語ができれば大丈夫。という話は嘘でした。えぇ、1から10までフランス語。計量の数字だけは間違えないように気をつけました。それを間違えたら・・・ぷるぷる。(恐怖)。
 学校のシェフたちが、一日に二三回様子を見に来てくれたのには感謝でした。今まで鬼とか悪魔とか言ってごめんなさい(おい)。
 始まる前に廊下にこっそりよばれ、「cipolina、ここには奇跡も神さまもない。信じられるのは自分だけ。祈りなんて届かない。だってここはHELLS KITCHINだから。ふっふ」。やっぱり悪魔か。
 もう一人の悪魔、いやシェフは「姿勢を正しく。頭をあげて。みんなが怒鳴っているときも急いでいるときも君は落ち着いて動くこと。ジュスィデゾレ(ごめんなさい)は必要ない。同じ間違いを二度しなければいい。ちゃんとやらないとディプロム返してもらうよ。アレジ(さぁ行って)」。
 廊下ですれ違うときに、汚れたトーションを腰にさげてると、さっと抜き取り黙って自分のと交換(シェフのはいつもきれい)。「アレアレ(行け行け)」。パティシエールキッチンにはたしかに神さまはいませんでしたが、見守ってくれる厳しくもやさしい目がありました。

 リッツホテルではケーキの販売はしていないので定番のケーキというものはありません。たとえ決まったものでも(エクレア、スフレ、フレジェなど)ちょっとした絞りや組み立てを変えていき、昨日より今日、今日より明日。と工夫されています。しかし、毎日デコレーションがかわるということは、昨日覚えたことが今日使えるとは限らないということで・・・(汗)。トップシェフ、スーシェフたちのひらめきが今日もくるのか??とドキドキしながら指示を待ち受けます。(私は下請けの下請けなのでそう難しいことは言ってこないのですがそれでもドキドキ)。
 現在リッツのパティシエキッチンは、クレアさんという30歳のトップパティシエール。東京のBEIGE(アラン・デュカス)に招聘され、後にドバイのハイアットリージェンシーのデザート部門を指揮、その後リッツに引き抜かれてきたという才能がきらめく人。BEIGE TOKYOによばれたときは、まだ23歳だったそうで、そのころにはもうスタイルができあがっていたわけですねぇ。すごい・・。
 小柄で華奢な彼女ですが、キッチンにいるときはとても大きな存在。自分よりはるかに年上のパティシエたちの中で堂々とした立ち居振る舞い。その指導は簡潔にして的確。彼女の仕事をちらりとでも見られたらと、そばににじりよってみましたけど、長く見つめている余裕がなく・・とほほ。
 私のような下っ端スタジエールは、朝はまずパーティ用のデザートや、カクテルと言われるプティフールの準備をします。エクレア300本、カロリーヌ300本などなど、2時間くらいはずーっと絞り。もう当分みたくないというくらいCREMEをしぼりました。
 昼時になると、ホテル内の二つ星レストラン・エスパドンのデザートの注文が次々と入るのでその手伝い。フランスの昼は遅く、忙しさのピークは14時から15時。そこでいったんブレイクがはいり、夜のデザートの準備や明日の朝用の焼き菓子作りが始まります。

 スタージュ中は写真が撮れなかったので、かわりにLADUREEのケーキを。トップ写真は、SAINT-HONORE FRAMBOISE。フランボワーズとバラとライチのクリーム。ST-HONOREは、お菓子の神さまの名前だそうです。

 いつかまた詳しいことを書きたいなぁと思いますが、今はまだ時間がとれず・・・。とりあえずここでのスタージュはいったん終了。
 パリを離れバスクへいってまいります。