cipolinaの甘い生活

お菓子ときどき旅

人気パティシエの行く末

 こないだの日曜日、駒沢公園を散歩していたら、なにやらパンのいい香りが漂ってきました。あれ?こんなところにパン屋さんあったかな?そういえば、オシャレなモノトーンの紙袋を下げた人が目につきます。人の流れを逆にたどっていくと、公園近くの巨大マンション「深沢ハウス」の下に人だかりが。そこには、ピカピカのガラス張りのお店が2軒。モンサンクレールの辻口シェフが作ったブーランジェリーマリアージュ・ドゥ・ファリーヌ」とジャムのお店「コンフィチュール アッシュ」です。雑誌で見てその存在は知っていましたが、まさか駅から歩いて15分以上もかかるところだとは思ってもいませんでした。この場所でも売れる、店側の強い自信が伺えます。
 「コンフィチュールアッシュ」には、コンフィチュール(ジャム)だけではなく、バームクーヘンも売られています。バームクーヘンにジャムを合わせる新しい食べ方を広めたいのだとか?ふーん。バームクーヘンとジャムを一緒に売るなんて、「和菓子屋」で「月餅」を売るようなものという私の思いとは裏腹に、お店は大盛況。外まで人があふれています。なんだかおもしろくないぞ〜!
フランス菓子から、チョコレート、和菓子、パン、ジャム、バームクーヘンへと手を広げ、最近の辻口シェフの勢いはとどまるところを知りません。パレットナイフを捨てて、実業家に転身してしまったのでしょうか。フランス菓子「モンサンクレール」初期のファンだっただけに、非常に残念な気持ちです。
 辻口さんに限らず、地元で人気だったパティスリーが、突然デパートに出店したり、あちこちに支店を作り出すと、私の熱は急に冷めてしまいます。ひそかに憧れていた男の子が、ある日ジャニーズのアイドルになってしまったかのような無念さです(なんじゃそりゃ?)。もちろん全国区になってもおいしさを失わないお店もあると思います。しかし、テクニックさえあれば、誰が作っても同じなのでしょうか?オリジナリティのなくなったお菓子に魅力はあるのでしょうか?
「日本で修行→海外の名店でスタージュ(研修)→コンクール優勝→自分の店を開店→繁盛したら人任せ」?こんな図式が目に浮かぶようです。
元天才たちが名声の代わりに失ったもの。その大きさに気づく日は来るのでしょうか。小さなおせっかい、長いグチをお許し下さい。