cipolinaの甘い生活

お菓子ときどき旅

Tarte Tatin (タルトタタン)


 紅玉が手に入ったので、久しぶりにタルトタタンを焼きました。
タルトタタンは、1800年代後半、オルレアンにほど近い Lamotte-Beuvron(ラモット・ブーブロン)という村で小さなホテルを営んでいたタタン姉妹が作ったタルト。
 オーブンに入れたリンゴにタルト生地を敷き忘れたことに気づき、「ええい、ままよ」と言ったかどうだかわかりませんが・・・。グラグラと焼けているリンゴの上に「とりゃ」と生地をかぶせたタタンさん。ひっくり返してみると飴色に輝く美しいリンゴタルトがあらわれた、というお話はあまりにも有名。
 失敗から生まれたタルト「Tarte Tatin」。後にパリの有名レストラン「MAXIM」のデザートに採用され、フランスはもとより世界中で愛されるお菓子になろうとは・・・。お釈迦様でも・・・じゃなかったタタン姉妹も気がつくめぇ。と、なにを言いたかったのかわからなくなってきましたが・・・。数あるお菓子のエピソードの中でも、ちょっとそそっかしいこの姉妹の物語ほど愛されているものはないのではないでしょうか。



 しかし、作るとなると悩ましいお菓子でして・・・。リンゴのカット(大きさ)をどうするか。オーブンで焼き込むか。鍋で煮こんでからオーブンか。しゃっきり感を残すのか。とろけるほどやわらかくか。キャラメルの濃さをどうするか、などなどなどなど・・・。答えはどこにもなく、何度も何度も失敗を繰り返しながら、自分らしいタルトタタンを探していくしかないのだと思います。

 今回はオーブンでじっくりと焼き込みました。写真↑、一時間くらいたったところ。底にはキャラメルバター、その上に半割にした8切れを詰め込みました。火が入るとリンゴの水分が抜けて隙間ができるので、切れ端を詰めていきます。リンゴが焼ける甘酸っぱい香りが部屋に広がって・・・。はぁぁ。たまらん。


 どきどきするのは、ひっくり返すとき。どうか崩れませんようにと祈って、いちにのさんでクルリ。
キャラメル、バター、バニラ、カルバドスが織りなす複雑な味わい。リンゴのおいしさがぎゅーっとつまったタルト。
失敗が人生を変えることもある。そんな勇気をくれるタルトであります。