cipolinaの甘い生活

お菓子ときどき旅

迷宮の湯屋

  

 街のシンボルでもある「道後温泉本館」は、三層楼塔屋付きの威風堂々たる姿。明治以降、次々と増築を重ねた巨大な湯屋は、急な階段があちこちにあらわれ、曲がりくねった廊下が部屋をつなぐ、映画さながらの迷宮の世界です。
 奥には皇族専用の御召湯もあり(見学可)、案内を乞わなければ歩けないような複雑な構造が、謎めいた雰囲気をいっそう深めているのかもしれません。

 
 3階には、夏目漱石正岡子規のゆかりの間があり(真ん中の写真)、道後の街並みを見下ろすことができます。当時はここから松山城が見えていたという話ですが、今は建物に阻まれています。残念。
 部屋に飾られた木彫りの像の脇には、晩年の漱石の言葉が掲げられています。「則天去私」。意味は「小さな私を捨てて自然にゆだねて生きること」。窓辺に立つ柳が風にゆられてざわめいていました。