cipolinaの甘い生活

お菓子ときどき旅

有田の陶器市(番外編)

 4月に入って、有田焼の陶器市を知らせるハガキがパラパラと舞い込むようになりました。恥ずかしながら、私は陶芸に夢中になっていた時期があって、数年間有田や唐津に通い詰めていたことがあるのです。腕はちっとも上がりませんでしたが、陶芸の先生や窯元さんの教えもあって、器の奥深さに触れることができました。(最近はすっかり遠ざかってしまったんですけれど・・・。)
 磁器生産で知られる有田は、川にそって東西にのびる谷にはさまれた小さな町です。絵の具のあとが赤く残った屋根瓦、高熱で変色したレンガ色のトンバイ塀。江戸時代の面影を色濃く残した赤絵町は、1991年に「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されました。
 しかし、この穏やかな町の光景も、陶器市の時には一変します。普段山間に窯を構えている陶芸家たちの作品も青空市場に並び、それを目当てに一日14万とも18万とも言われる観光客が押し寄せるのです。柿右衛門や今右衛門といった敷居の高いブランド窯も、このときばかりは、お祭り気分で賑わいます。
 リュックに軍手、帽子といった陶器市ファッショに身を固めた上級者たちは、お目当ての窯元の前で朝7時くらいから開店を待ちます。折りたたみ式の小さなイスを持参していたら、相当なプロだと思って間違いありません♪
 私のお気に入りの窯元は「源右衛門窯」。やはり早朝から並んだものです。発色の美しさ、手にした時の感触、初めて見たときから恋に落ちました(笑)。といっても高価な品。訪れるたびに、一枚、また一枚と買い足しました。

お皿の国の人々

 江戸時代、有田の陶工たちは裕福で「発句と一口浄瑠璃を知らぬ者なし」と言われるほど、遊び事にたけ、きっぷのいい人が多かったとされています。その名残りが残っているのかどうか。窯元を訪れると「器は使わないと、良さがわからないから」と1つ6千円もするようなグラスをポンとくれたり、「家に上がっていきなさい」とおよばれすることもしばしばです。
 秋のお茶碗市の時に、割れたお皿を、新しいものと交換してくれるのも有田ならでは。「命あるもの(ワレモノ)だからね」という言葉を聞いた時は、ハッとしたものです。割れたお皿は一カ所に集めらて、供養されます。
 「器は割れかたでも善し悪しがわかるんですよ。作りのいいものは細かい破片が散らず、潔くパリっと割れますから」と教えてくれたのは源右衛門窯の人。幸か不幸かまだその割れっぷりを目の当たりにしたことはありませんが、さすが皿の国の人たちは違うと、恐れ入りました。